令和2年10月号 山井 葉里子さん(安松中学校 教諭)
更新日:2020年9月26日
プロフィール
山井 葉里子さん
(東所沢和田在勤)
安松中学校で英語を教えて7年目。生徒たちへの実践を通して、英語の読み書き指導の方法について記した論文が第17回大野政巳英語教育賞の最優秀賞を受賞。
二児の母として子育てに奮闘中。一人の時間はカラオケや読書などでリフレッシュ。子どもの頃の夢は漫画家。
英語で心を通わせられる生徒を育てたい
「Ready?」軽快なテンポで生徒たちに語り掛けるのは、安松中学校で英語を教える山井葉里子さん。日々教壇に立ちながら、「英語教育」のあり方について模索しまとめた論文がこのほど、優れた英語教育の研究を表彰する「大野政巳英語教育賞」の最優秀賞を受賞した。
流暢な発音とは裏腹に、中学生の頃はクラスでワースト3に入るほど英語が苦手だったという。高校生になると、国際協力の仕事に憧れを抱き、苦手な英語と向き合うようになった。
高校3年生の時に通っていた塾で、日本史の講師の分かりやすく、興味をそそられる授業に感銘を受けた山井さん。「私もこんな授業の達人になりたい」そう思い、教師への道を志した。「英語の教師を選んだのは、同じ英語が苦手な生徒たちの気持ちが分かると思ったんです」。授業中も生徒たちに積極的に話し掛け、一人一人の声に耳を傾ける。まるで、昔の自分を彼らに重ねているかのようだ。
念願の教師となり、とある中学3年生の授業を受け持った時のこと。「テストの点数は良いのに、『family』という単語を聞いても綴りが思い付かず、最初のFの音さえも予測して書くことができない生徒にショックを受けました。単語を形で覚えてしまったり、英語らしい発音ではなく、カタカナの発音に慣れてしまったりと、読み書きの能力が十分ではなかったんです」。この頃から、これまで当たり前とされてきた英語教育のあり方に疑問を持つようになった。
山井さんが考える「英語」とは、目的ではなく手段。将来、世界に飛び出した生徒たちが自分の考えを伝える時に、英語が障害になってほしくない。そんな思いから、母校の大学で英語を1年間学び直すことに。英語の読み書きができるようになるためには、いきなり教科書の英文を読み始めるのではなく、英語独特の発音やアルファベットへの理解を深めるなど、段階的な指導が重要だと気付いた。
現場に戻り約2年間かけ、生徒たちに読み書きの力を養う実践を行い、その結果を論文で発表。冒頭の受賞に至った。
アルファベット、単語、英文と丁寧に読み方の訓練を積むことで、初めて見る英単語でも自然と読める生徒が増えていった。授業中、生徒同士が臆せずに英語でコミュニケーションをとっている光景は、山井さんが発音することへの抵抗を減らしてくれたおかげかもしれない。
「英語を『学問』としてではなく、コミュニケーションの一つと考えてほしい。英語ができれば世界中の人と考えを共有できる。大切なのは、文法や単語の間違いを恐れずに、英語を使ってみることだと思います」。英語が苦手なあなたへ、山井さんのこの言葉を贈りたい。(宮崎)
Web版こぼれ話
授業中は生徒目線で
山井先生の授業では、しばしば生徒たちがペアになって課題に挑戦することがある。
できるだけ日本語は使わず、英語で互いの伝えたいことを発言・理解しようと奮闘する生徒たち。
自分の考えを英語で話すのに苦労している生徒を見かけた山井さんは、素早く駆け寄って、自らしゃがみこみ、生徒たちと同じ目線でアドバイスをしていた。
慣れない英語での授業に置いて行かれないように、常に生徒目線で指導する。自身も英語が苦手だった過去を持つ、山井さんの生徒への姿勢がよく表れたワンシーンだった。
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