令和4年12月号 本木 裕一朗さん(「うずらの魅力」伝道師)

更新日:2022年11月26日

プロフィール

本木 裕一朗 さん

(市内在住)

株式会社モトキ 代表取締役。生まれも育ちも所沢。
卵だけでなく、プリンやオムライスなどの加工品を通してうずらの魅力を追求・発信。
半熟で漬け込み味を染み渡らせた商品2品は、「所沢ブランド特産品」の認定も。
時間ができたら挑戦したいのは料理。「今は本業で手一杯ですが」と笑う。

小さな卵で大きな笑顔。所沢からうずらの魅力を広める

小さくてコロンとしたフォルムの内側に、高い栄養を秘めたうずらの卵。「これからの日本の食を支える存在だ」と確信し、昭和31年に所沢で生産販売を始めた人がいた。
それから66年。本木さんは、高級品だったうずらの卵を家庭の食卓にと願った祖父、父親の熱意を引き継ぐ「『うずらの魅力』伝道師」だ。
 
子どもの頃の本木さんの目には、うずら農家の家業が地味に映り、魅力を感じられなかったという。大学卒業後、家を出て電子機器を開発する会社に勤めていたある日、父が倒れた。家業はどうなる、という思いが初めて浮かんだ。悩むこと半年、父親の誕生日に「家業を継ぐ」と宣言したのは30歳の時だった。
当初は新人と同等の扱い。経験のない営業の仕事にも苦労していた時、「うずらの卵なんか」という言葉を投げかけられた。「生産する側が、魅力を伝えてこなかった。広めるための努力が足りなか った」と本木さん。「なんか」という言葉は、悔しさとともにその後の本木さんを突き動かしてきた。
「うずらでなくては」の答えを探し続けていた本木さんは、ある研究論文で、日本のものより大きく濃厚で、栄養価が高いフランス原産のうずらの卵の存在を知る。いてもたってもいられず、「幻」のうずらを求めガイド本を手に渡仏。目当てのうずらは幻に終わったが、現地のうずら生産者を訪問し、苦労の末、2002年に日本初輸入に成功。以来、その卵はモトキの看板商品のひとつとなっている。
また、慣れない経営を引き継ぎ、心身共に疲れ果てたある日、ふと「同じように疲れている人が多くいるはず」という考えがよぎった。リラックスできる空間を創りたいという思いと、生産した商品を直接販売できる店が欲しいという願いが重なり、直売店「うずら屋」が誕生。木や土、自然の素材にこだわった内外装で、訪れる人を明るく迎え入れてくれる。
 
2019年10月、台風により日高の飼育場が浸水。約20万羽のうずらの半分が水死するという災難に見舞われた。「辛かったあの時、たくさんの人に助けられました。泥だらけで現場を片付けた社員、『モトキを助けよう』とSNSで呼びかけてくれた人たち…」本木さんが言葉を詰まらせた。「いつか恩返しがしたい、何ができるかと、今も考え続けています」
続くコロナ禍、餌代の高騰と、試練は続く。が、「恩返しがしたい」という強い想いを胸に本木さんは前を向く。より良質なうずらの卵や製品を広めて、健康的な食生活の役に立ちたい、喜んでもらいたいという願いも「恩返し」のひとつの答え。「Small Egg , Big Smile(小さな卵で大きな笑顔を)」を胸に、本木さんの挑戦は続いている。
(取材:加賀谷)
 

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