令和6年12月号 原 優一さん(藤原歌劇団・日本オペラ協会所属/オペラ歌手)

更新日:2024年11月26日

プロフィール

はら 優一ゆういち さん

(市内出身・在住)

プロとして4年目にして来シーズンの同歌劇団の本公演「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」へのデビューが決定した、今オペラ界で大注目の若手新進テノール。所沢小・中学校出身で、地元の友人と飲みに出掛けるのが毎月の楽しみ。月一で訪れるほどのディズニー好き。大学時代は永江ながえ恭平きょうへい選手の活躍見たさに、西武ドームでアルバイト。焼き団子はしょうゆ派。
(注釈)テノールとは高い音域の男声歌手のこと。

出会いに導かれて、真のオペラを知る

 「背伸びせず等身大で歌うことが安定の秘訣ひけつ」と大らかな笑顔で話すのは、はら 優一ゆういちさん。導かれし天性のオペラ歌手だ。
 生まれも育ちも所沢。「幼少期は西所沢の山車で太鼓をたたいたこともあった」と語る原さんは、当初クラシックとは無縁の生活を送っていた。中学はテニス部で高校も普通科、両親が音楽をやっていたわけでもない。ただ、歌が好きで、音楽なら良い成績が取れると感じていた。
 原さんが最初に描いた夢は「歌のお兄さん」。入り口は「テレビに出たい」という軽い気持ちだった。夢を叶かなえるべく音楽大学へ進学したが、卒業時のオーディションでは不合格。進路に悩んでいたところ、歌の先生の勧めで「歌手」としての勉強をするため別の大学に編入することに。そこで「一度だまされたと思ってオペラをやってみなさい」と導かれる。


 「軽く考えるのは自分の良くないところ」と言う原さんだが、実際は常に自らに期限を課していた。「大学に編入できなければ」「歌劇団のマスタークラスに入れなければ」「修了後仕事が無ければ」「30歳までに本公演デビューができなければ」音楽をやめよう……人との出会いに導かれ、全てを実現させてきた。
 修了後、次々とオペラの主役級に抜てきされていたが、とある公演で「直立のまま歌うだけで、舞台上に動きがない」と物足りなさを感じてしまう。

 そんな時、共演した歌手に衝撃を受けた。「その人が舞台にいるだけで面白いんです」。舞台の雰囲気を自ら変えていく すべを学んだ原さん。今まで、自身が動かずとも周りの演技に盛り立てられていたことを実感し、演出家の要求に応えるだけだったオペラ感が変わった。「動作一つでも、なぜそのコップを取るのか、その感情によって間は異なるし、コップの取り方も違ってくる」。演技の奥深さ、自分も含め皆で作り上げる喜びを知った。「最終的に演奏を届けるのは歌手だが、背景には多くの人による下準備がある。それらを背負えることが演者としてのオペラの魅力」と語る原さんは根っからの舞台人。その重圧が心地良いと言う。
 「オペラはただ歌うのではなく、ストーリーがある『演劇』。日本語の作品や、外国語でも字幕があり、同じ演目でも解釈によって異なる作品になる。ぜひ映画やミュージカルと同じように、気軽に劇場へ来て、生の声に包まれる感覚と、特有の世界観を楽しんでほしい」。少年のように自然体の原さんだが「歌劇団を背負えるような次世代のテノール歌手になりたい」と、心は熱い。次はどんな役を生きるのだろうか。心待ちにしたい。

(取材:齋藤)

WEB版こぼれ話

演奏してみたいオペラ

 原さんのが今、一番やってみたいのは、グノー作曲のフランス語オペラ「ロメオとジュリエット」のロメオ役。かっこいいロメオを演じたいとのこと。美しい旋律が魅力的だとか。

好きなオペラ

 オペラ界で不動の人気作、プッチーニ作曲のイタリア語オペラ「ラ・ボエーム」。もちろん、こちらも演奏したいが「歌うにはまだ早い」と言う原さん。経験や年齢を重ねるごとに変化するのもまた、オペラや歌の魅力。フレッシュな歌声も、熟練した歌声も、聴き逃すまじ。次回、原さんが「ラ・ボエーム」の詩人・ロドルフォ役を歌う日が待ち遠しい。

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