平成30年12月号 藤村龍至さん(建築家)

更新日:2018年11月26日

プロフィール

藤村龍至さん

椿峰出身。
東京藝術大学准教授。建築設計事務所・RFA主宰。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手掛けるほか、まちづくりにも数多く携わる。埼玉県の「持続可能な郊外住環境実現プロジェクト」では、自らが育った椿峰ニュータウンを取り上げ、地域活性化への問題提起に取り組む。小さいころの夢は、まちづくりに興味を持つきっかけとなった地・神戸市の市長になること。

まちと社会を設計する建築家

「まちに出て、まちと関わりながら、そこに必要な建築や仕掛けを設計・デザインしていきます」と自らの建築手法を語るのは、建築家の藤村龍至さんだ。
「建築家は、図面を引いて建物を設計する人では?」と思った方もいるかもしれないが、藤村さんのスタイルは違う。藤村さん流の“建築”をひも解いた。

建物設計だけでなく、都市再生プロジェクトなどにも携わる藤村さん。
きっかけは、2011年に東洋大学専任講師として、学生に出した課題だった。
「架空の場所を設計するのではなく、実際の都市問題を踏まえて設計することを課題にしたんです。
現実にある高齢化や人口減少、公共施設の老朽化などの地域課題に対応できる建築を考えていきました」。
そのプロセスは、住民の声を聞き、その場所に最適な建物を設計していく。
一見、当たり前のように思えるが、特徴は一度の関わりで終わらないことだ。
住民とのワークショップを何度も行うことで、
住民は自分事としてまちづくりに参加するようになっていき、最終的には住民を巻き込んだ地域活性化につながっていく。
その動きは「鶴ヶ島プロジェクト」として、全国でも有名な取り組みとなった。

“建築”が、まち全体の活性化につながっていく。
ここに、藤村さんが手掛ける都市デザインの真髄がある。

藤村さんが今、注目している場所。
それは、自身が20年近くを過ごした椿峰ニュータウンだ。
「幼少期から大学卒業まで椿峰で育ちました。
そんな身近なまちも多くの課題を抱えていることがわかり、椿峰のことを調べ始めたんです」

山口地区と小手指地区にまたがる椿峰は、住宅地の中に緑豊かな自然環境があり、美しい景観を保っている。
しかし、高齢化問題は椿峰も例外ではなく、地域活性化が課題となっていた。
藤村さんは、まず住民自身に議論してもらい、まちづくりのヒントを知る場として、シンポジウムを2回にわたり開催。
その動きは住民を動かし、地元の主婦を中心とした「つばきの森のマーケット」という手作りの公園マルシェの開催に至った。

「気負わずに、好きなことを周りの人を巻き込んでやることで、そこに魅力を感じて人が集まります。
そうして、多世代の人が関わり合って、まちの課題にも取り組めるようになります」。

椿峰のこれからに注目だ。

一般的な建築家のイメージを覆す藤村さんに、目指す姿を聞いた。
「その時代、その場所でなければ生まれない建築を作りたいです」。
藤村さんの言う“建築”。
それは、建物だけでなく、そこに暮らす人や社会、まち自体を設計すること。
多くの課題に直面している日本において、かけがえのない建築家が所沢から生まれたことを誇りたい。

(取材:佐々木)

web版こぼれ話

藤村さんが都市デザインに興味を持ったのは小学3年生のとき。
神戸市で進行していた、山を開発したのちに、その土で海辺を埋め立てる大都市計画を知ったことがきっかけ。
そのため、子どもの頃の夢は、あこがれの地・神戸の市長だったそう。
建築家をはっきりと意識したのは、高校生の時。
美術館の展覧会で、建築家・安藤忠雄さんの「光の教会」の平面図を見て衝撃を受けた。

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