令和元年5月号 佐藤真紀さん(樹木写真家)

更新日:2019年4月26日

プロフィール

佐藤真紀さとうまきさん

数々の山を歩き、1枚の絵を切り取る感覚、物語を語る感覚で樹木の写真を撮る写真家。
3歳から所沢で育つ。
料理、鉄道、プロ野球観戦(現役時代からの西武・辻監督の大ファン)など、興味と行動力は、とどまるところを知らない。

樹木は被写体でなく自分の投影。樹木専門の写真家

山が好き。幼い頃、母に連れられて山登りをした楽しさが忘れられなくて。
写真も好き。父のカメラを借りた時のワクワク感は、今も変わらない。

当然、カメラを携えて数々の山に登るようになった、佐藤真紀さとうまきさん。
ある日、ふと気付いた。自分の撮る写真が、風景や花でなく、樹木ばかりだということに。

樹木写真家・佐藤さんの作品は、静かに見えて、能弁だ。
「樹木を登場人物に見立てて、物語の一部分を切り取る感覚。感情や個性を込めて撮るのが好きなんです」。
隣の木に恋をする木、群青色のグラデーションの空に浮かぶ三日月に語りかける1本の木のシルエット。
耳をすませば、彼らのつぶやきやおしゃべりが聞こえてきそうだ。

6年前、全く違った環境で暮らしてみたい、と日本を飛び出し、中国の奥地で生活した。
水道もガスもなく、他に日本人などいない村で生活した1 年間で実感したのが、当たり前と思っていたことが当たり前ではない世界があること。
でも、違いを大らかに受け入れる文化の寛容さに触れ、「自分も、少し大人になったかな」と笑う。
劣等感も自分の個性だと認められるようになったという。

帰国後、久しぶりに高校時代の同級生に会うと、なんと画家になっていた。
葉の絵を描いていた彼女、MIZUKIさんの個展を訪れ、意気投合。
コラボした作品展で、初めて自分の作品が売れた。
写真家としてのスタートだった。

カメラの手ほどきをしてくれた、星の写真の愛好家たちとの出会いも、背中を押してくれたターニングポイント。
「出会いに助けられて、ここまで来ました」

単なる癒やしを超えた、ストーリーのある作品は、感情を表に出すことが苦手という佐藤さんが、自身を樹木に投影させたり、語りかけたりする中で生まれてきた。
人と話すのが苦手でも、人との出会いに助けられてきた佐藤さん。
紙芝居や音楽とのコラボなど、人との交流を深めつつ、活動の幅を広げている。

「実は、夢があるんです」。佐藤さんが目を輝かせた。
「いつか、趣味の料理の腕を生かして、山の近くにギャラリーカフェを開きたい。自分の作品だけでなく、同好の士の発表の場、交流の場になったらいいな」

今日、自分にもささやかな夢ができた。
自然を愛し、木々と語らう写真家の作品を山のギャラリーカフェでゆっくり鑑賞すること。
そこにはきっと、はにかんだ笑顔で作品を解説してくれる佐藤さんの姿があるに違いない。

(取材:加賀谷)

Web版こぼれ話

第一印象を裏切るアクティブさ!

樹木と語る、妖精?
初めてお会いした佐藤さんは、ふわりと穏やかに笑う、もの静かな印象の女性でした。
しかし、お話を伺うと、未知の外国の村へ単身飛び出すなど、想像以上にアクティブ!
樹木の撮影の時も、カメラの性能に頼らずに、思う色や光に出会えるまで雨の中で何時間も待つことがあるとか。
強靭な精神力の持ち主でもありました。

あまりに多彩な趣味

写真や登山以外の趣味はありますか?の問いに、
「趣味なんてあったかしら…なんだろう…」考えることしばし。
仕事が趣味なのかな?と思い始めた矢先、
「あ、料理が好きです。それから、野球観戦。現役時代からの辻さんのファンで、埼玉西武ライオンズの応援に全国の球場に足を運びます。電車も好き。ぽってりした塗装の昔の車両が好きで…」
と、次々に飛び出す趣味の多彩さに、びっくり。
ご本人は「趣味」という認識がなかったようです。
好きなことなんでも、全力で向かっているだけ。そんな、佐藤さんの一面が垣間見えた気がしました。

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