平成29年12月号 朝倉 敏雄さん(縁起物総合メーカー四代目)

更新日:2018年3月22日

プロフィール

朝倉あさくら 敏雄としおさん

旭町在住。明治3年から所沢で続く縁起物総合メーカーの老舗・株式会社面亀の四代目。
面亀の由来は、初代・旭州きょくしゅう(幼名・亀吉かめきち)の作った面が創業のきっかけだったことから。

所沢で紡がれている伝統文化

小判や米俵などの縁起が良い飾りの中心でほほ笑むのはおかめの面。
「飾りの裏にはワシの爪をかたどった熊手があり、幸運をつかみ取ることを意味しています」。
明治3 年創業、業界の老舗である株式会社面亀の四代目を務める朝倉敏雄あさくらとしおさんが熊手の意味を教えてくれた。
縁起物総合メーカーとして、熊手を中心に国内トップシェアを誇り、所沢の地で代々日本の伝統文化を紡いできた面亀。
そんな伝統ある家業を朝倉さんが継いだのは32 歳の時だった。

「先代(父親)が病で突然亡くなったんです。
歴史ある家を自分が守らなければならなくなった時のプレシャーはすさまじかった」。
突如のしかかった重圧。しかし、歴史があるからこそ負けてはいけない。
先代たちが築き上げてきたものを残していくために、長男である敏雄さんを中心に兄弟5人でその苦境を乗り越えてきた。
「長男なので私が四代目を名乗っていますが、実際は兄弟全員が四代目なんです」と語る朝倉さんの言葉からも、兄弟で支え合って面亀を守ってきたことがうかがえる。

兄弟の支えとともに大きな力となったのは、先代である父・保信やすのぶさんが築き上げた地域での信頼だった。
「面倒見のいい父は人のつながりを大切にし、地域で信頼される環境を整えてくれていた。
だからこそ、突然の代替わりで大変だった時も周りの方々が支えてくれました。
信頼されているからこそ、創業から140年以上も続いているんだと思います」。

創業以来のこだわりは、一つずつ人の手で仕上げること。
「機械化できないわけではありません。けれど、それをやってしまったら終わりだと思っています。一つ一つ、手のぬくもりが伝わる熊手をお客様に届けたい」。
もう一つ大切にしているのは、対面販売だ。
直接会って話すことで、相手の心に寄り添うことができ、求めているものが感じられると言う。
「常にお客様の反応を見ながら誠心誠意対応します。対面販売でしか見えてこないことがある。毎年の熊手作りでも、どうしたらお客様がさらに喜んでくれるかを考えながら取り組んでいます」。
確かに、面亀の熊手を見ると全てが同じ装飾ではなく、少しずつ飾りが異なっていた。
毎年購入しているお客さんが飽きないための工夫で、飾りに変化を加えているそうだ。
伝統の中にさり気なく新しさを入れる。ここにも面亀が長く愛される秘訣があった。

街の中で熊手を見かけることがあれば、それは朝倉さんの熊手かもしれない。
そのときは、ぜひ、ここ所沢の地で紡がれている伝統文化があることを思い出してほしい。
(取材:佐々木)

日本一早い熊手市

日時:1月1日(祝日)午前0時から
場所:所澤神明社

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