高次脳機能障害

更新日:2024年4月1日

はじめに

脳卒中や交通事故、高い所からの転落、脳炎、低酸素脳症などで、脳に損傷を受けた結果、以前と同じ能力を発揮できなくなったり、人が変わったようになってしまうことがあります。
例えば、記憶の障害が生じ、必要なことを覚えられず日常生活や、学業、職業生活等に支障が出る、感情のコントロールができず、対人関係がうまくいかなくなる等の症状が現れることがあります(現れる症状、程度は人によって異なります)。

東京都による調査からわかったこと

東京都の調査(平成20年)では、都内に約5万人の高次脳機能障害者がいると推計されています。
また、通院患者調査では、以下のような調査結果が出ています。

  • 女性よりも男性が多い
  • 60歳以上の人が全体の67.2パーセント
  • 発症原因は脳血管障害が全体の81.6パーセント、脳外傷が10.0パーセント
  • 障害の内容では、行動と感情の障害が44.5パーセント(意欲の障害、抑うつ状態、不安、興奮状態など)、記憶障害42.5パーセント、注意障害40.5パーセント、失語症40.4パーセントと多く見られた。

本人も周囲も気付きにくい障害です

脳を損傷したことによる、認知機能全般の症状を「高次脳機能障害」といいます。
受傷、発症後、身体的な後遺症を残さない場合が多いため、外見上障害があることがわかりにくく、周囲の理解を得られにくいといった問題もあります。
また、障害の程度によっては本人でも気付かないということもあります。

高次脳機能障害にみられる症状

記憶の障害

古い記憶は保たれているのに、新しいことを覚えられなくなります。約束を忘れる、日時をまちがえる、現在どこにいるのか分からないなどの障害です。

注意の障害

一つのことに注意を集中したり、多数の中から注意して必要なことを選んだりすることなどが難しくなります。気が散り、疲れやすいため、数分間しか作業や課題が行えないこともあります。ぼんやりした表情や変化の少ない表情をしがちです。

遂行機能障害

自分で物事の段取りが出来なくなる障害です。仕事が遅かったり、作業の手順も分からなくなってしまいます。このため、動作の開始や中断が難しくなることがあります。

社会的行動障害

感情が不安定になったり、我慢ができなかったり、こだわりが強くなったりするため、攻撃的になってしまい、まわりの人とトラブルを起こしやすくなります。ゆううつな状態が続く人もいます。

失行

手足の働きに問題がなくても、服を着る、箸やはさみを使うなど普段できていたことができなくなります。自分の意図した動作や指示された動作を行うことができない障害です。

失語

聞く、話す、読む、書くなどのことばの機能が障害を受けます。他の人に意思を伝えたり、他の人が伝えてきたことを理解したりすることが難しくなります。

失認

視力に問題はないのに、色、物の形、物の用途や名称が分からない、絵を見て全体のまとまりが分からないなどの症状です。視覚、聴覚、触覚の各感覚においての認識障害です

半側空間無視

きちんと見えているはずなのに、自分の左(または右)に何があるのかが分からなくなる障害です。例えば、左半側空間無視の場合では、食事の際に左側の食べ物を食べ残す、ドアを通ろうとして左側にぶつかる、車いすや歩いて廊下を移動していてだんだん右側に寄っていくなどの状態が見られます。

地誌的障害

よく知っている場所で道が分からなり迷ったり、自宅の見取り図や、近所の地図が書けないなどの障害です。

高次脳機能障害のリハビリテーション

  • 社会的リハビリテーション

デイサービスなどの福祉や介護のサービス等を利用し、仲間と交流するなど、社会参加を促進する

  • 職業リハビリテーション

職業評価や職業訓練、就労支援等の就労や復職等を支援する

  • 認知リハビリテーション

注意・記憶・遂行機能等の脳の情報の認識・分析の機能を認知と言います。高次脳機能障害に対するリハビリテーションを認知リハビリテーションと呼びます。

子どもの高次脳機能障害

子どもが病気や事故による脳の損傷によって、高次脳機能障害が起こることがあります。

脳の病気

脳炎、脳症(インフルエンザ・麻疹等)、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍など

事故による脳の損傷

脳外傷(交通事故・転落・転倒等)、低酸素性脳症(溺水・窒息等)

子どもの高次脳機能障害の特徴

子どもは成長途中であることから、その後の成長や環境の変化などにより症状が変化しやすいと言われ、始めの頃は症状が目立たなくても学年があがり、学習や人間関係などが複雑になるなかで症状が目立つ場合があります。
障害への配慮がない失敗体験や叱責などは、自信の喪失や不登校などの二次的な問題につながります。
その子どもの高次脳機能障害の特性を親や支援者などの周囲の人が理解し、対応を工夫することが大切です。

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